ついに行われた日銀の為替介入の手法について

今回の介入四つの疑問点

今回の為替介入については、介入した為替水準はさておき(前回にご説明しました"円の実効為替レートのお話の通りです。)その介入の手法について興味深い点がいくつかありました。

 

1.EBS(Electric Broking System)を利用した始めてのドル買い介入
2.海外時間帯、ロンドン時間帯実施、ニューヨーク時間帯不明なるも"委託介入"は実施していない
3.介入したことの公表をいち早く財務相が発言し、且つおおよその介入金額についてもマスコミに報道したこと
4.政府官房長官が為替介入水準についておおよその数字82円と発言していること

 

介入の功罪についは、諸説あるためここでは書きませんが、この4点について共通して言えることは、"見せるためのパフォーマンス=政治主導のアピール"として実施されたものと思われます。

 

“1”については、これまで使った実績がない事での"意外性"ではありますが、その背景には“2”の「委託介入(過去は海外時間帯について各国中央銀行を経由してドル買い介入実施すること(例えば、ロンドン時間帯ならBOEイングランド銀行、ニューヨーク時間帯ならNYFEDニューヨーク連邦銀行が日本銀行の為に介入する。)」をしなかったのではなく、出来なかったのではないかという疑念があります。わざわざ日銀の為に為替介入の事務的なお手伝いするには、各国中央銀行の理解と協力がなければ実現できません。“3”については、明らかに代表選終了直後に実施し、「断固たる対応」をしている意志を強調したかったと思われます。

 

隠密介入(市場参加者に、目に見えないドル売りの違和感を与える効果があります。)もあった時期から考えると、かなり大胆である印象を与えるのですが、何故おおよその金額まですぐさまマスコミに報道させたのかは疑問が残ります。さらには“4”については、介入権限のない官房長官がマスコミに対し、82円水準という「具体的な数字」を表明したこと。為替レートは2国間での交換価格にて具体的な為替水準は公表しないのが鉄則(公表すると、経済のファンダメンタルズを背景とした変更に際し、市場に大きな変動要因をもたらす可能性が出てくる。)で、為替介入権限があるのは財務相であり、官房長官ではないのにこの様な発言がなされたのは断固たる意思の表明ともとられますが、危機感の表れと市場に理解されかねないリスクをとっているものと思われます。

 

一方、前回もご説明しましたが、この外国為替平衡操作に調達する資金の枠が外国資金一時借入金、融通証券及び繰替資金の限度額(外国為替資金証券:通称為券)が、平成22年度予算で140兆円から5兆円増額して145兆円となりましたが、現在の為券発行残高は約110兆円ですので残りは約35兆円の介入ができるともいえますが、「しかできない」とも言えるわけです。

 

しかも、今回のある程度の介入金額をおおやけ(2兆円と言われています。しかもこれまでの1日の最大規模と見られております。)にしてしまったことから、これだけ使って2円程度のドル円の押し上げ効果しかない、或いは毎日介入したとしても2カ月もたないといった懸念が台頭しかねません。枠増には国会で補正予算を組まなければならずねじれ国会であり、かつ円安で以前は「埋蔵金」と言われた外為特別会計も数十兆円規模の含み損を抱えており、国会で枠増が通るかどうかは難しくなる可能性はあります。スイスは自国通貨高回避でスイス売りを最近までおこなっておりましたが、含み損の拡大からインフレ懸念が出てきたからという理由づけをしていましたが、介入をあきられました。

 

一度介入をしますとすぐさま失敗は出来ず、ある程度は継続しなければならなくなるというジレンマに陥る可能性があります。政府筋から勝つために介入したという表現は、残念ながら先進国政策担当者とは言い難い、投機的ともいえる発言の様にとらえかねません。

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